NANA(13)

なんとなく「転換期」を思わせる13巻でした。
パーティーに集結する登場人物たち。交錯する複雑な人間関係。
次巻でいよいよ最大の事件が発生し、クライマックスに向かっていきそうな気がします。


私がこの『NANA』というマンガに関して「(いろんな意味で)すごいな」と思っているのは以下の点です。
1.作者のプロ根性
2.人気、性描写、メディアミックス(=徹底して商業的)
3.少女マンガの「おきまり」をいくつかの点において打ち破っていること


どれも賛否両論あるところだと思いますが、私が特に気をひかれているのは3.についてです。
少女マンガの法則。「運命の相手は1人だけ」「その相手は決して、取り返しがつかないほど裏切ることはない」。奈々のつきあう相手は皆いろんな意味で奈々を裏切っている。


それからどんな人間にも汚い部分があることを描いていること。
マンガにはだいたい、主人公目線で見た時に「神様」みたいに見える頼れる人が登場しますが、このマンガではその「神様」的人物の裏側も描いてしまっています。(奈々から見たナナやヤスがそうだと思います)奈々にとって理想的な相手に見えたノブですら、百合と関係した後で現実的な態度をとるような、タクミ的な部分を持っている。(=女性にとって理想的な男性なんて存在しない)
完璧な人間はいない。未完成で未熟な人間たちの足掻きが描かれているマンガ。


私がNANAをおもしろいと思うのは、ストーリーではなく、たぶんこの人間の描かれ方にあるんだと思います。登場人物の心の揺れが、「わかるわかる」と痛みをともなった共感を呼ぶのです。その具合が私にとってちょうど良いから「おもしろい」のだろうな。その具合がちょうど良くない人にってはおもしろくないのもわかる気がします。


NANAを「リアル」と表現する場合、こういうことがあるからだと思います。現実的すぎて読んでて痛いし夢なんて見れません。だから設定だけは「人気のアーティストとの友情・恋愛」というありえない設定になっているのでしょう。