『アラベスク』山岸涼子

ネットであちこちで「おもしろい」と聞くので読んでみました。感想。
1巻:普通の古典的な少女マンガという印象。これ面白い……か?
2巻:だんだん続きが気になるような感じになってきた。
3巻:気づけばもうボロ泣き。ページを繰るたびに新しいティッシュが必要になってる。
4巻:話が深い。おお……と引きこまれながら、最後はわりとさわやかに読了。


でもなんか解説が。「死んでいるようにも見える」って。せっかくさわやかに読み終わったのに何だか残酷。
病院のベッドで終わるマンガって多い気がするんですけど、まあ多いと思うわりには例が「MONSTER」しか思いつかないんですけど、ああいう終わり方(病院のベッドとか、誰かが眠って安らかな顔をしている姿)って個人的にはすごい「イヤ」であります。なんか穏やかなようで逆に不安が残されるというか。ハッピーエンドってもともと構造的に「死」を想起させるものなのかもしれませんけど。というかバッドエンドでも何でも「エンド」は死に繋がっているのかもしれませんけど。
続いていく、未来が無限に広がっていく、そういう感じの話の終わり方が1番好きです。矢沢あいなんかは特にそう。話がおもしろいとか絵がきれいなのはもちろんですが、作者の別の作品に前作のキャラが引き続き登場したり、未来がつながって広がっていく感じがして好きなんです。


……いつのまにか矢沢あいの話になってましたが。
アラベスク』に話を戻すと。
このマンガはバレエになぞらえて人生のいろいろな局面を表現しているのだと思いますが、常に主人公ノンナ・イワノワには「比較される対象」が出てきます。端的に言えばライバルなんだけど。いつも「欲しいもの」「必要なもの」をはさんで、それを取り合う立場のライバルが存在しているということです。このライバルと「比較される」ということの残酷さに、ノンナはいつも追い詰められている。私自身の問題にひきつけて考えてみても、誰かと比較されることは非常につらかった。物語の最後にノンナが行きつく答えは、当たり前といえば当たり前のことなんだけれど、それが意外と前向きではない辿りつき方をしたあたりがリアルだなあと思いました。


あとはもう何といっても、この作品の魅力は「深さ」にあるかなあ、と思いました。主人公のカップルは決してお互いに「好き」「愛してる」って最後まで言いません。プラトニックだし、なれあったりしない。でも逆にそこが深い。かなり深い。愛だな、って感じです(書いてて照れる・笑) 暇つぶしにネットの恋愛小説も読んだりしますが、こんなに深く描いている作品はやっぱりない。これがプロだ、名作だ、って改めて思いました。
アラベスク』は噂にたがわず面白かったです。読んで良かったマンガ。