『室温〜夜の音楽〜』

カテゴリは映画にしてますが、ドラマです。更に言うなら、もとはお芝居です。これも友達にDVDを借りましたシリーズ。最近N嬢にネタ提供してもらってばかりのような…(-o-;;


V6の年長組(世間はそれをトニセンと呼ぶ)が主演。ともさかりえも重要な役どころで出ています。ホラーとコミカルの共存を目指した作品らしい(尼村さんによると。)
普通に面白かったです。20分ずつくらいで区切られて全6話構成なので途中でだれずにぽんぽんと観れました。ネットの感想を漁っていたら、どこかで「ソフト狂気」というような表現が使われてましたけど、そんな感じっすね。狂気過ぎなくて観やすい。あとところどころ笑いでズラす感じがあってそれも観やすかった理由のひとつ。


以下ネタバレ含みますので「これから観たい!」という方はご注意ください。


(書いてたらいつになく長くなってしまいました。いつもの大学のレポートよりも長い/笑。無意味に論文口調なのは同時進行で自分の卒論も書いているせいだということで勘弁してください)




感想など。
とりあえず各登場人物について。


少年C。
この人はどういう位置づけなのかなと。頭の中でずっと迷わされた。
登場した時は、「出所して十分反省している加害者」。
キオリになじられた場面では、「実は本当の意味で反省できてない欠陥人間」。
自称・海老沢ファン赤井とふたりになった場面では、「どこにでもいる普通の青年」。
最後の方で事件当時のことを告白する場面では、「心弱い不幸な人間」。
真相を含めたすべての状況から判断すると、最後の評価が一番近いような気がする。「信じてたのに浮気された」って思ったのは、不幸な勘違いだったわけで。かといってサオリが悪いわけでもなく、彼女自身も被害者で。(じゃあ一番悪いのは加害者だった父親なのか?それについてはまた後ほど。)
彼は物語に登場した時点からずっと焼香をあげたがっていた。でもそれはキオリによって阻まれ続ける。ラストシーンでキオリ(サオリ?)が屋敷全体に火をつけて、これが盛大な焼香となったのだろう。彼の願いも、「ずっと一緒だよ」の言葉を信じ続けたサオリの願いも、これでやっと叶えられた。
そういえば「死体がとりもつ縁の話」の挿入は何だったのだろう…。これはもしかしたらこのドラマ全体を風刺したような挿話だったのかも。サオリの事件(=死体)を引きずり続けるキオリ(=運転手)と、そこに現れた間宮(=男)との結婚式(=放火による昇天)。


タクシー運転手。
この人はあまり書くことないのでキーワードだけ書いておきます。
お腹が痛い、頭が痛い。父と二人暮らし。泥棒。
それにしてもボンネットに乗っていたおじいさんて誰?


警察官。
最後までよく理解できなかったんだけど、この人が殺して井戸に放り込んだ小学生っていうのは誰だ? (戸籍上の)自分の子なのか、それとも奥さんの不倫相手の家庭の子なのか?電話で「子どもが行方不明?家出だろ」とかって他人事っぽく話していたから後者かな。でも「母親は遺体と対面したのか」って母親について訊いているからやっぱり自分ちの子?
この人もいろいろ難しそうな役柄だと思う。キオリに悪いお金を作ってあげてて、奥さんが不倫してて、その恨みから子どもを殺害。彼は自分がしたことを正当化したがっているけどやっぱり罪悪感からは逃れられずにいる。っていうか今気づいたけど、この人自分の不倫を棚上げしてないか?


海老沢。
サオリを最後の一押しで殺してしまったのはこの人なんじゃなかろうか。
間宮からの電話を本当は受け取っていて、だけどなかったことにしたのはこの人なんじゃなかろうか。
どうしてサオリを虐待したのか。
どうして10年経ってサオリの死を受け入れてしまえたのか。加害者が憎くないのか。
どうしてキオリに黙って殺されようとしていたのか、赤井に刺されたのか。
果たして著書に書いたことは嘘だったのか、これを書いた真意は何だったのか。
娘を失い、奥さんが精神を病み、死を覚悟し、それでも彼が生き続けてきたわけは何だったのか。
この人はこの人の問題を抱えている。
もしかしたら、この人も奥さんが憎かったのかもしれない。娘たちに愛憎うずまく思いを抱えていたのかもしれない。その真相を知るはずの奥さんは今、精神を病んだまま静岡で静かに暮らしているのだろう。


赤井。(藤崎姉)
彼女は比較的わかりやすい。「弟を殺された恨み」ということ。
最初、加害者の立場で登場した彼女だったが、実は彼女自身が罪を犯したわけじゃないので(加害者の保護者ならまた話は別だけどあくまで姉だし)、実は弟を亡くした「被害者」の立場にいたわけだ。あーなるほどー、と何だかすごく納得してしまったが。納得してよかったんだろうか果たして。いわゆる逆恨みじゃ…。


サオリとキオリ。
実は一番気になる二人。タイトルになってる「室温」と非常に関わりが深そうだから。喫茶店での「暑い」「寒い」問答。風邪を引きやすかったサオリ。その風邪をいつもうつされていた双子のキオリ。何か非常に象徴的な感じがする。
サオリは起点で、キオリはその引き受け役、という構図が出来ていると思う。
暑い寒い言い出すのがサオリ。それを引き受けて室温調節するのがキオリ。
風邪を引くのがサオリ。それを引き受けてうつされるのがキオリ。
事件に巻き込まれて死ぬのがサオリ。それを引き受けて10年以上経ってからやっぱり死ぬのがキオリ。
キオリはとてもサオリを愛していたのだと思うけど、それだけだったのだろうかとも思う。サオリのおかげでとても恥ずかしい思いをした、と告白するキオリ。サオリの事件で母を失い、生活が一変したキオリ。お金のために多くの男性とつきあわなければならなかったキオリ。そしてそのキオリは今妊娠しているらしいのだが、その父親としてまず頭に浮かぶのは他の誰でもなく、海老沢ではないか。キオリは海老沢の暴行もまた、サオリから引き受ける格好になったのではないか。
キオリは「引き受け役」だと書いたけど、引き受けるのはいつもサオリの悪いものばかりだ。だとすればこんな損な役回りはない。キオリの罪は、現在怪しいお金を作らせていることだけではなく、昔サオリを疎ましく思ったことにもあるのではないか。そんな気がする。実際キオリは後悔している、「あの時もう一度エアコン調節を頼んであげれば良かった」と。サオリのことを深く愛すれば愛するほど、キオリにとってその後悔の意味は重い。他人が考えるよりもずっと。ただし、サオリを尊重することはキオリにとっては自らを滅することを意味したわけだが。ふたりは双子なのに同時に存在することができない不幸な存在同士だったのかも。
そして直接には登場しなかったサオリの罪について。彼女の罪は何でもキオリに引き受けさせたこと。サオリは「父の捻じ曲がった愛」によって殺された、と言えるが、一方のキオリは「サオリを想う母の愛」によって殺された、と言える。間接的に、キオリを殺したのはサオリの存在なのではないか。
あと、「寒い」のを我慢して風邪をひいたサオリは、学校放火の時「暑い」のを我慢して死んだ。ラスト直前、「暑いわ」「暑いわ」と繰り返すキオリの台詞は、自らの死が近いことを暗示していたのだろうか。あるいはもっと深い意味がありそうな気もする。



「悪魔が乗り移ってる」
汚れた血を流すんだ」
これって結局、このドラマに出てくるいくつかの事件に当てはまるのかもしれない。お腹の中の子は、不倫相手(浮気相手)の子なんじゃないか?という疑念。自分以外の他人、どこかの誰か、「どこかってどこよ!?」(by藤崎姉)
その何だかよくわからない外側の世界の穢れた感じを、内側の世界に持ち込んでほしくなくて、凶行に及ぶ人々。
内側は内側だけでやっていく、室温はエアコンで調整するのだ。だけどその調整は難しい。加減を間違えると風邪をひく。その波紋は他人(外側)にまで広がってしまう。


室温。
それは人によって感じ方が違う。誰かとあわせていくのは難しい。だけど外側の世界も確実に存在する。それを忘れてはいけない。


……。という感じで勝手に考えていますが、読みが甘いところとか勘ぐりすぎなところとかいろいろありそうで、滅。


ああ、あともうひとつだけ。
たまの音楽がすごく素敵にマッチしてましたね。たまがこんなにいいなんて知らなかった。なぜこんな自然に溶け込んでいるのかわからない…!演出が良いのかなあ。なんで?どうして?とりあえずすごい。


いっぱい書いたわりには言いっぱなし・書きっぱなしの部分が多くてすみません。途中から疲れてきて結構いい加減になってます(^_^; 無責任&不親切…ひどいな。読みやすく箇条書きに直そうと試みたんですが、なんか到底無理でした。。